2022年2月7日、抱き枕カバーの新たな生地『アクアヴェール』をようやくリリースすることができました。
本ページでは、2021年から始まったプロジェクト『#新しいトリコットをつくる』の一環として、『アクアヴェール』で取り入れた新しい技術や変更点などをご紹介します。
製品のご案内とは別に、技術者として皆様へお伝えしたいことを、いまから書いていきたいと思います。よろしくお願いします。
『アクアヴェール』は、弊社従来品(アクアプレミア)や、他社製品を基に設計しておらず、全く別の生地に仕上がっています。
とはいえ、じゃあどのように違うの? という疑問や、「全く別の生地」に不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。
なので、今回は『アクアヴェール』リリースまでの弊社従来品『アクアプレミア』との違いを簡単にご説明したいと思います。
ゼロベースの新規設計。どこが変わった?
『アクアヴェール』と、従来品『アクアプレミア』の違いは、以下の通り大別できます。
それぞれの違いを、紐解いて詳しく解説いたします。
極細繊維の糸で、これまでにない滑らかさ
アクアヴェールは、アクアプレミアと比較して、細い繊維を使うことで糸の密度を大幅に高めています。
この説明を聞いてもピンと来ない方が多いと思いますから、きちんと説明します。
弊社2wayトリコットの糸は、すべて「撚り糸(よりいと)」です。たくさんの繊維を撚って(ねじって)、1本の糸として扱っています。
たとえば釣り糸のように、1本=1本ではないのです。
アクアヴェールでは極細の繊維を採用し、アクアプレミアと比較すると、同じ1本の糸の太さでありつつも、繊維の密度を従来比約133%まで高めました。
参考に、顕微鏡で撮影した生地の写真の一部をご紹介します。どちらも同じ倍率で撮影したものです。
後者の「アクアヴェール」の方が繊維が細いこと、密度が高いことが実感いただけるかと思います。
台数の少ない編機で、超高密度の生地を実現
先に説明した細い繊維が集まった高密度の糸を、高密度の編機でトリコット編みにします。
この高密度の編機は需要が少ないため、トリコット編みができる工場でも所有する台数が限られます。
従来生地はスポーツ・水着関係など、一般的な2wayトリコット生地の用途に使われる編機を使用していましたが、今回は素材にこだわるメーカーが高級衣料などに特別採用する、高密度専用の編機を使用しています。
とはいえ、衣料品の生産が海外にシフトしている現状であり、国内で編立できて、その高密度の編機を有している工場は限られます。
今回は、抱き枕カバー専用生地の開発のため、その貴重な編機を探して採用し、次の画像の通り明らかな生地密度の向上(従来比約111%)を実現しました。
これが、先の極細繊維と合わさって、これまでにない滑らかな質感を実現しています。
(画像は同じ顕微鏡倍率で、同じ面積を撮影しています)
柔軟加工の変更で、より柔らかく、より滑らかに
ここは秘密な部分なのであまり多く語りません。
御存知の方も多いかと思いますが、弊社は10年以上前から抱き枕カバーの生地に柔軟加工を施してきました。
今回、その加工を見直し、更に保湿感や滑らかさを高め、より人肌に近い触感に仕上げています。
また、副次的に汚れなども付きにくくなり、洗濯による柔軟性の劣化も抑えられています。
ギラつきを抑えた、上品な仕上がり
先程お見せした、生地の顕微鏡画像をもう一度お見せします。
この2枚は、同じ条件で撮影した、顕微鏡写真です。
アクアヴェールの方が反射が少なく、ギラギラした感じが無いことがお分かり頂けるかと思います。
従来品は純度の高いポリエステル糸=糸の透明度が高いものを使用していました。
純度や透明度はもちろん品質の現れでもありますが、光に対する反射が大きく、これまでに指摘されたギラつき(光沢感)の原因になっていました。
今回、この透明度を意図的に抑えることで過剰な反射を減らし、適度な白度・光沢感に調整しました。
もちろん、プリント精度も高くなりました
ここまでは、繊維・糸についてや、生地の密度など、設計や触感にかかわる点についてご説明しました。
メーカーさんや、作家さんが気にするところは、「じゃあ今までと見え方が変わるの?」という点かと思います。
生地目がわかりやすいように、あえて角度を付けて、アクアヴェールとアクアプレミアを比較撮影してみました。
(これはiPhoneで撮影したので、同じ時間・場所で撮影しましたが若干誤差があります)
これまで説明したように、密度が上がったことで、生地の表面が滑らかになり、「生地っぽさ」が少し薄れたかと思います。
紙と同じで、ザラザラな紙とサラサラな紙で、印刷結果の解像感に違いが出ることは、生地でも同じです。
生地の目(表面の波打ち)が目立たなくなることで、より解像感の高い印刷結果になりました。
もちろん、今まで通りRGB入稿に対応ですし、印刷方法に変わりはありません。色味が大きく変化するような心配は要らないでしょう。
(この画像はクリックで拡大表示できますので、ぜひご覧ください)
『アクアヴェール』と『#新しいトリコットをつくる』のこれから
長い歳月をかけて、ゼロベースで設計した抱き枕カバー専用生地『アクアヴェール』。
ここまでの説明のように、従来品と同じ目線で、1点ずつ比べることは可能です。
でも、開発者としては、「今までより良くなった」ではなく、「新しいものができた」と思っています。
分かりやすいよう、今回は従来品との比較で『アクアヴェール』をご紹介しましたが、ぜひ皆様にも、ゼロベースで、新しいものとしてご評価頂けますと幸いです。
そして、プロジェクト『#新しいトリコットをつくる』のこれからは、日進月歩の印刷技術なども含め、幅広く情報をご提供するブログのような活用をする予定です。
『#新しいトリコットをつくる』の更新情報は、弊社Twitter(@fules_jp)でも告知致しますので、ぜひフォローをお願いします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ライクラ®(LYCRA®)はThe LYCRA Companyの商標です。
LYCRA® is a trademark of The LYCRA Company.